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シラフの梅ふく [居酒屋&人間ドラマ]

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中央銀座アーケードを歩いています。まだ陽が完全に落ちていないので点いてる灯も少ない。客引きもいない。
17時から営っている店が思いつかないので、確か17時30分にOPENする筈であるあの店へ向かっています。ここ数年は20時半以降にしか行ってませんが、今回は久々にシラフのマスッター(Mさん)が見れるかな。
まさかOPEN早々に飲んでないよね。
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まだ17時半には少し早いが電飾看板が点いてるぞ。もう営ってるのかな。
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暖簾が出てる。赤い提灯も灯っている。
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引戸が開いていた。声がかかった。
「いらっしゃい珍しいですね」
ガラガラガラと引戸を開けたらMさんがひとりでいた。ママがいない。他のお客さんもいない。
「早いですか?」
「平気平気。座って座って。端じゃなくてここ座って」
ホントだ~。シラフだ~。(アタリマエか)
「珍しいですねこんな早い時間に。今日かーちゃんがいないんで風邪ひいて休んでるんですよ」
風邪?
連休中、お孫さんにウツされたらしい。
「じゃぁ今日はひとりで。それじゃぁ飲めないじゃないですか?」
「飲まない飲まない。今日は呑まない」
ホントですかぁ?
力強く言い切ってたがアヤしいな。大丈夫かな。
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鍋をのぞいてみたらいつものように満々と湛えられていなかった。半分以下の量で、牛肉と、伸びに伸びたラーメンに見えるシラタキが煮込んであった。すき焼き風か。
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冬場はおでん、夏場はモツ煮になります。
「牛鍋?」
「牛肉です。肉がちょっと固いかも。猪鍋だと思って食べてください」
私は長年船山温泉で猪鍋を食べてますよ。
猪肉は煮込めば煮込むほどやわらかくなるんだけど。
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なるほどシラフである。
酒の香がしないぞ。滅多に見れないシラフのマスターとマジメなTALKを交わしました。
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「ママは風邪ですか。風邪流行ってるのかな。いつからです?」
「ウチ30日1日2日は開けたんだけど、最終日から調子悪かったのかな。3日から寝込んじゃって。市販の風邪薬飲んでも効かないから休日当番の病院に行ったのよ。でも、もうこじらせた後だし、いつも通ってる病院じゃないから、そこにはあの・・・なんていうんだっけ?カルテだ。かーちゃんのカルテみたいなものがないから、この人は普段どういう薬を飲んでこれぐらい強い薬出しても大丈夫ってのがわかんないみたいで、出された薬飲んでもあまり効かなかったんだよね」
「休日診療は点数は割増されるし『休み明けにかかりつけ医で受診してくださいね』ですよ。だから出す薬の日数少ないし、たいして効かない安全な薬しか出さないんじゃないかな」
「ああそうかもね。そうかそうか。いつも行ってるお医者さんなら『今日もこれから商売なんです』ってお願いすれば取り敢えずは効く薬出してくれるからね。」
マトモに会話が成立しています。こんなの久々ですよ。初めてかもしれない。
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「マグロあります?」
「あるある。どうします?トロ、赤身、中落ち」
「適当に一皿に載せてよ」
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意外にマグロが美味しいのだ。ママがいないので食べたら空いた皿をカウンター上に下げます。
「10連休?」
「ええ、ずーっと休んでましたよ。中日あたりから苦痛になってきた。休む為の休みみたいになっちゃって」
「ああそうだよね。やっぱ働いて休んで働いて休んでメリハリが無いとね」
「私なんか休んでも給料出ますけど、飲食店や商売営ってる人や非正規雇用社員の人は困りますよね」
「ああ、パートさんは時給だからね。そういう人は長く休めても、長く休んだ分だけ入って来るもの(お金)が無いからね」
マトモな会話じゃないか。いつも酔っ払ってる状態しか見てないから。マスターちゃんと会話できるじゃん酒が入って無ければ。まるで別の店みたいだ。
マスターのご子息のネタになったけどそれは個人情報なのでカット。そしてひとり、またひとりお客さんが入って来られて、皆ママの容体を心配しながら、
「今日はママがいなくて大丈夫か?」
「マスターひとりで回せるのか」
「飲んじゃったら」
「誰が会計するんだ?」
そっちの方を心配していたよ。
後から来た女性客が「ママにメールしたら、風邪で休んでるっていうからさ」急いで駆けつけてきたそうです。
「アタシが手伝ってあけるわよ。造るのは無理だけどお客さんに出すだけなら」
初めは遠慮していたマスターもお客さんが入って来たらそうも言ってられなくなったらしく、その女性の好意に甘えて座敷、小上がりの人に「これ、出して貰える?」頼んでましたね。
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隣の男性が呟いた。
「ママ風邪か。心配だな。マスターは大丈夫なの?」
「あ、大丈夫大丈夫。自分酒飲んでるから。酒は百薬の何とかって言うじゃない。酒飲んでると身体に免疫力がつくんだよね」
???
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支那竹2.jpg
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「今日の鍋は何?」(隣の方)
「あ、今日だけこれ。猪の肉なの。こちらのお客さん(私のこと)も仰ってたけど、ちょっと固いかもって。猪だと思って食べてくれる?」
「やわらかい肉も混ざってましたよ」
殆どシラタキだけだけど。
あ、ビール飲んでるっ!!
アッ飲んでる.jpg
電話もかかってくる。
「7時から5名様??・・・大丈夫です!!」
座敷に2名、カウンターに私を入れて3名、そして7時から5名入ったら準満席になる。「今日はかーちゃんがいないから飲めない」と決意表明してはいたが、時間の経過とともにそれもアヤしそうだ。
酒や料理の出して空いた瓶や皿を下げるのは手伝って貰ってもいいけど、お会計は大丈夫かな。
「ちょっと待ってね。いつもかーちゃんにやって貰ってるから。久々に自分で会計するからさ」
でも自分で書いた数字がよく見えないみたいだ。
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さて次は何処へ?.jpg
後は知らない。女性客がアシストしてくれそうだし、他のお客さんも助けてくれるだろう。
客に愛されるヘンな店である。
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